答えは必ずある 逆境をはね返したマツダの発想力

マツダ 心を燃やす逆転の経営」を読んだ後、Amazonさんからマツダのミスター・エンジンこと人見光夫氏の「答えは必ずある 逆境をはね返したマツダの発想力」という書籍をお勧めされたので読んでみました。今回はその内容をメモします。


SKYACTIVの開発をはじめた当時、先の記事のマツダ金井氏が研究開発部隊のおエライさんだったとすれば、人見氏はエンジン周りの先行開発を指揮する現場のマネージャー兼技術責任者という立場だった人物です。SKYACTIVの開発では、
  • 電気自動車やハイブリッド車ではなく内燃機関の効率化を突き詰める
  • 世界の主流である加給ダウンサイジングを採用せず、高圧縮比の自然吸気ガソリンエンジンの開発に徹する
という他の自動車メーカーとは全く異なる道を突き進んで成功を収めたのは有名な話ですが、この中で核となったエンジン開発の陣頭指揮をとっていた人物が当時を振り返り、リソースの少ないマツダでどうやってこのような成果が出せたのか、得られた学び、技術者のあるべき姿などを語る内容です。

サラリーマンが目立つようなことをすると、ろくなことがない」というネガティブな一言から始まるビジネス書は他に見たことがありませんが、自分自身の弱点や、不満、無力感、屈折した気持ちなどを素直に語る口調には好感と信頼感さえ覚えます。一方で、技術に対しては周囲の意見や世間の動向に流されることなく、事実を冷静に分析し、そこから導き出された結論に向けて信念を持って徹底的に突き進む側面もあり、この対照的な姿が非常に魅力的です。

書籍は2015年発売ですが、この時点で2019年末に発売されるであろうSKYACTIV-Xエンジンとその先の開発の道筋がはっきり見えているのが読み取れるのが興味深いです。

また、金井氏の書籍とこの書籍にも何度か登場する藤原氏(マツダ副社長)の強烈な個性と存在感も伺い知れます。マツダは人を立てる戦略、現場の人間に語らせる戦略がうまいですね。こういう魅力的な人物というのはきっとどこの企業にも一定数いるんでしょうけど、他の企業だとせいぜい社長がニューモデル発表会のプレゼンでちょっと出てくるのがいいところで、これだけいろいろな顔が見える自動車メーカーというのは珍しいのではないかと思います。こういうのが顧客のロイヤリティを上げる一助になっているのではないでしょうか。

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