Cセグメントハッチバック対決 〜2輪駆動・ガソリンエンジン編〜

マツダ3は世界のベンチマークとなれるか?

先日読んだ書籍「マツダ 心を燃やす逆転の経営」によると、マツダ長年の目標である「打倒ドイツ車」。つい最近発売された第7世代商品群第一弾であるマツダ3もこの目標を達成すべく開発されたに違いない、ということで、今回はマツダ3ファストバックを取り上げて、いろいろな競合車と比較して、この目標がどの程度達成されているか確認してみようと思います。










ベンチマーク表を作成してみよう

先の書籍で紹介されていたベンチマーク表を作成して、縦軸に機能や仕様、商品性を並べ、横軸に車種を並べてみました。作成したベンチマーク表を書籍で触れられていた「同じコストで最も性能がいい」「同じ性能なら最も安い」という観点で比較してみます。なお、あらかじめお断りしておきたいのですが、この比較は特定のクルマを貶めること、もしくは崇め奉ることを目的としたものではありません。結果は評価軸(評価する人)ごとに存在し、前提条件が変われば結果も変わります。あくまでも私が勝手に定めた仮定の下での比較であるということを念頭に置いて見ていただけると幸いです。

比較対象車種

マツダ3ファストバックはいわゆる「Cセグメントハッチバック」と呼ばれるカテゴリーに属するクルマです。今回は、一番競合が多いと思われる2輪駆動のガソリンモデルに焦点を当ててみます。比較対象車種は次のとおり、世界のベンチマークと呼び声の高いゴルフをはじめ強豪揃いです。
  • BMW/1シリーズ
  • メルセデス・ベンツ/Aクラス
  • ホルクスワーゲン/ゴルフ
  • ボルボ/V40
  • アウディ/A3 Sportback
  • ルノー/メガーヌ
  • プジョー/308
  • アルファロメオ/ジュリエッタ
  • MINI/CLUBMAN
  • レクサス/CT200h
  • トヨタ/カローラスポーツ
  • スバル/インプレッサスポーツ
  • ホンダ/シビックハッチバック
  • マツダ/マツダ3ファストバック

比較項目

比較項目の選定はかなり悩みました。そもそも各クルマの設計思想はメーカーごとに異なります。このため各機能がカバーする範囲も微妙に異なり、メーカーが公表している装備表を単純に比較することができません。

そこで、ユーザー目線の評価基準として「サポカー/サポカーS」で定義されている安全装備に加え、個人的にクルマを購入する際に最低限必要と思われるナビゲーションシステムなどの快適装備を加えたものを比較項目としました。標準装備で項目を満たす最低グレードをベースにして、標準装備でサポートしていないものはオプション装備の金額を車体価格に加えて合計価格を算出しました。

これでもまだ単純な比較が難しいため、各車のエンジン出力とエンジントルクを合計価格で割った「出力単価」、「トルク単価」を算出し比較しました。この比較を行った背景として「結局一番比較しやすい性能はパワーでしょ」という考え方があります。例えば、「乗り味」のような定性的基準で比較するのは無理がありますし。ちなみに、ハイブリッド車についてはシステム出力が確認できなかったためランキング対象外としました。


結果

さて、マツダ3は「打倒ドイツ車」を達成できたのでしょうか?結果はこちら。結果の見方は表内左下のセルをご確認ください。

今回比較項目とした安全装備、快適装備をすべて備えた上で、出力単価、トルク単価ともにトップクラスという結果になりました。現時点でどのモデルよりも新しいため、元々有利なのは当然ではありますが、現時点でコストパフォーマンスがトップクラスなのは間違いないでしょう。

所感

各車ごとに所感をメモしてみます。

マツダ3

オプション含め今回比較対象とした安全装備、快適装備をすべて備えている唯一のクルマでした。装備的に隙はなく、パワーもそれなり、価格は安いという超優等生です。より燃費を求めるならディーゼルモデルや2019年10月に発売を予定している新エンジンSKYACTIV-Xを待つという選択肢があります。

BMW 1シリーズ

発売開始時期が古く、最後のモデルチェンジからもだいぶ時間が経っており、装備的にはかなり辛い感じです。1シリーズは既にフルモデルチェンジが発表されており、2019年9月には発売になる見込みです。このクラス唯一のFRモデルがFFに変更されるということでどうなることやら、という感じはしますが楽しみです。

メルセデス・ベンツ Aクラス

マツダ3を除くと発売時期の一番新しいモデルです。さすがプレミアムブランドのメルセデス、車両本体が高額なことに加え、今回の要件ではオプション金額だけで100万円近くになってしまいます。費用的に庶民を寄せ付けない感があります。個人的には、値段以上にメルセデスらしい派手な見た目に躊躇してしまいそうです。

ホルクスワーゲン ゴルフ

世界のベンチマークと呼び声の高いゴルフ。発売時期が2013年と結構古いわりには、先進装備はそこそこ充実しています。モデルチェンジで時代に合わせてアップグレードされてきたということでしょうか。今回の比較では飛び抜けたものは見られませんでしたが、そつなくまとめるあたりさすがです。

ボルボ V40

先進装備のほとんどが標準装備なのが特徴的です。グレードの上下を問わず、世界一安全なクルマと言われる理由がここにあるのではないかと思います。車両価格も飛び抜けて高いわけではないので、わりとお買い得なのではないかと思います。ただ、ハイオク仕様はランニングコストが高く付くので、本命はディーゼルモデルかなー。

アウディ A3 Sportback

さすがアウディ。今回一番高額なモデルでした。今回載せた「30 TFSI sport」は下から2番目のグレードですが、一番下のグレードである「30 TFSI」はオートエアコンが装備されていません。さすがにアウディでマニュアルエアコンはないだろう、ということで一つ上のsportを選択しました。装備は充実していますが、ほとんどオプション扱いでそれぞれかなりいいお値段なので、今回のような買い方をすると高く付きます。個人的にはデザインのスッキリ感が世界一と思っています。高くても欲しい。

ルノー メガーヌ

上位グレードのR.S. トロフィーRはニュルブルクリンクでホンダのシビックタイプRと最速ラップを競うほどのハイグレードモデルですが、今回比較したGTもそれなりの価格がします。ただ、安全装備、快適装備を標準で備えているので最終的にはそれほど高額にはなりません。出力単価とトルク単価がトップクラスなので、限られたコストをパワーに注ぎ込みたい方に最適なモデルかと思います。

プジョー 308

プジョーってあまり良く知らなかったんですが、平均的に高額なヨーロッパ車の中では意外と安いんですね。装備も充実していますし、燃費もかなり良い方です。車両重量が軽いのがいい方向に働いているんでしょうか。ただ、ガソリン車はハイオク仕様なので、本命はディーゼルモデルですかね。このあたりはボルボV40と似ているかもしれません。

アルファロメオ ジュリエッタ

安全装備はほとんど何もついておらず、燃費もお世辞にも良いとは言えませんが、パワーは圧倒的です。この辺がアルファロメオらしい。モデルチェンジからだいぶ時間が経っているので、この項目で比較するのはちょっと辛かったかもしれません。同社はステルヴィオやジュリアなど最近いいクルマを出しているので、今後の展開に期待したいです。

MINI CLUBMAN

CLUBMANをこの中で比較するのはどうかと思うのですが、一応サイズ的には同じクラスに属しています。このクルマも発売からだいぶ時間が経っているので装備周りは全般的に辛いですが、MINIには独自の世界観があるので細かいこと気にする方が無粋かと思います。

レクサス CT200h

今回、唯一のハイブリッド車です(カローラスポーツにもハイブリッド仕様はありますが、より安価なガソリンモデルがあるのでルール的に比較対象に入らなかった)。さすが、トヨタのハイブリッド車は燃費が圧倒的です。フルモデルチェンジ時期は最古参にも関わらず、安全装備も充実しているあたり、時代に合わせてしっかりとアップデートするトヨタの隙のなさを感じさせます。

トヨタ カローラスポーツ

車両価格はマツダ3とほぼ同じですが、安全装備、快適装備の一部がオプションとなるため最終的な金額は少し高くなります。エンジンはマツダ3と比較して若干非力ですが、燃費は良好です。この違いは商品性の重心位置の違いかと思うので、どちらが優れているといったことはないと思います。好みで選ぶのでいいのではないでしょうか。より燃費性能を求めるならハイブリッドモデルという選択肢もあります。

スバル インプレッサスポーツ

安全装備に定評のあるスバル。車両価格は一番安価ですが、オプションを追加するとカローラスポーツとほぼ同等の価格になります。ユーザーに選択肢があるということにもなるので、余計なものはいらない、という人には最適なモデルとも言えるでしょう。

ホンダ シビック

レクサスを除く他の日本車と比較すると車両価格が若干高めですが、エンジンがそこそこ強力なので出力単価、トルク単価がそれほど悪いわけではありません(むしろコスパはトップクラス)。選択肢は1グレードのみなのがちょっともったいない感じはしますが、最低限これくらいパワーは欲しいでしょって方には特に問題ないのかもしれません。安全装備系含め基本的に余計な装備はついていないので、全部オプションで追加していく必要があります。

その他

サポカー/サポカーSが求める要件を比較項目として入れてみて感じたのですが、基本的にヨーロッパ車には「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」は装備されていません。これはメーカーの安全意識が低いというわけではなく、日本国内における制度設計上の効果と考えたほうが良さそうです。お墨付きがあれば売りやすいですからね。

燃費の表記についてはWLTCとJC08が混在しており、比較が難しいです。2018年10月以降型式認定を行う新車は、これまで使われてきたJC08モードからWLTCモードに切り替わるので、しばらくは過渡期ということで比較し辛い状況が続くと思いますが、消費者の立場からするとWLTCで再計測を強制する制度にして欲しいものです。

全方位モニターは、今回比較した中で標準装備のクルマはありませんでした。Cセグメントぐらいのサイズであれば不要ということなんでしょう。同意です。

今回は2輪駆動のガソリンモデルで比較してみましたが、ディーゼルモデルや4輪駆動で比較してみるのも面白そうです。次回に続く

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